短歌と妄想

短歌鑑賞ブログです!と言いつつほぼ読書日記です。

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『ルポルタージュ』売野機子著

漫画コーナーで「愛の形」が特集されてました。その中の一冊。


ルポルタージュ 売野機子著

ルポルタージュ  (1) (バーズコミックス)

ルポルタージュ (1) (バーズコミックス)

 

 


2033年近未来の話。その頃恋愛はすたれ気味で、「大人が恋をするのは子供っぽい」とされています。条件のあった人とマッチングして淡々と夫婦となるのがフツー。寝室は別で、子供を作るときだけ一緒。


さらには、「恋はいらない、共に生きていける人を探したい」という人のためのシェルターがあって、理念に共感した男女が40人くらい共同生活しています。「この人」という人がみつかったら、シェルターを卒業するのです。


ある日、そのシェルターがテロにあい、30人以上が死亡。新聞記者のヒロインが、亡くなった方について取材して、ルポを書くことになります。


ヒロインは今までは警察つきの記者で超多忙だったのですね。恋とは無縁の人。過酷な仕事に集中するため、心を揺らしかねない映画や芸術は遠ざけてストイックに生きてきました。


ところが。ヒロインは取材の過程で、社会的弱者を支援するNPO職員と出会い、恋に落ちてしまう。お互い一目惚れ。


そんな感じで、主人公の取材により、30人の亡くなった人にとってそれぞれ愛は何だったのかが、描かれる一方、主人公の恋愛についても同時に描かれます。


バックボーンとしてテロリストの動機は何だったのか、という謎があります。


第1話の取材対象はテロで妻がなくなった夫。彼は「妻と深く話したことはなく、話すような思い出はない」といいます。しかし、主人公の働きかけで、妻が写りの悪い大学入学式の写真を恥ずかしがって隠したことを思い出し、その時「抱きしめたい」と思った、と話す。そして、ヒロインは「恋愛でなくても、この2人には愛情はあった」と思うんですね。


読み応えあります、3巻まで出てます。


いろんな形の愛がある、あっていい、ということを描き出そうとしている意欲作なのではと思いました。


それと、恋愛がからむとやはり人の心は揺れてしまうということ。「決めた」と思っても後から涙したり、思い切って駆け戻ったり。いろんな人が揺れる様子も細やかに描かれます。


この作者さんが好きになりました。