短歌と妄想

短歌鑑賞ブログです!と言いつつほぼ読書日記です。

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レプリカントになれる雨

秋のあめふいにやさしも街なかをレプリカントのごとく歩めば
大塚寅彦『空とぶ女友達』

 

(「レプリカント」は、映画『ブレードランナー』に出てくる人造人間のことです。)
 
ある夜駅を出ると、針のように細くて柔らかい雨が降りはじめていました。急いで歩きながら、「雨か~」と憂鬱になりかけた瞬間、はたと気付いたんですよ。これは優しい雨だ、レプリカントの歌の雨だと。
 
でもって、その後はレプリカントのごとく歩みましたよね、帰り道を。レプリカントは見た目は人間と同じですが、身体能力が高いので、そのつもりになって歩みました!あと、レプリカントは自分の存在に疑問を持っている。それを思い出すとむしろ雨に包まれたいぐらいの感覚になりました。2秒前までと全然違う気持ちでした、不思議でした。
 
レプリカントの歌を知ることで、私にとって「弱い雨」はただの雨じゃなくなったんだなぁと思います。
 
ある歌を好きになると、その歌の風景が自分のものになる。その風景と自分の日常風景が重なったとき、自分の日常が特別なものに見える。面白いなぁと思った。
 
短歌でなくて、曲とか、本とか、映画とか、もっと言うなら新しい単語でもいいんですよねきっと。なにかが自分の中に特別な風景をもたらしてくれるならば。
 
短歌が他の娯楽と違うのは、31文字で情報量が少ないから、鑑賞するとき、鑑賞する側の情報を入れて読まざるをえないんですよね。すると、ハマったとき、その一首のもたらす風景は、ほかの娯楽のもたらす風景より、いっそう「自分のもの!」っていう感覚が強くなる気がします。
 
今日は春ですが、優しい雨が降っているので、ちょっと今からレプリカントになりに行ってきます♪♪

 

大塚寅彦集 (セレクション歌人)

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