短歌と妄想

短歌鑑賞ブログです!と言いつつほぼ読書日記です。

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わざと目を細めれば

めをほそめみるものなべてあやうきか あやうし緋色の一脚の椅子
村木道彦『天唇』

 

先生の昔話
この歌で思い出した、高校の英語の先生の話を書きます。
先生には、高校生の時仲のよい友人がいて、毎日哲学的議論を交わしていました。その友人がある時メガネを外して言うのです。
「俺は、メガネをかけた世界より、メガネをかけないぼやけた世界の方が好きだ」
その後しばらくして、彼は自死してしまいました。先生は「ぼやけた世界が好きになったら、人間あぶないんですよ」と言っていました。

 

わざと目を細めれば
上の先生の話が頭に残っているため、私はこの歌はこう読みたくなります。歌の主役は、わざと目を細め、視界をぼやけさせている。そして「全てがあやうい」「頼りなく消えてしまいそう」なんて思っている。目を細めれば、ただの赤いイスまでが、不確かなものに見えてくる。
わざと現実感のなさを感じようとしてるんだと思います。

 

疎外感を感じた日
若い時の、死に誘われてるような心理を詠んだ歌かなと初めは思ったけど、多分、そこまではいかない。
周りから疎外感を感じた日、世界に距離を感じた日に、ちょっと目を細めてみたのかも。
「オレだけが、不確かな世界に生きてる」そんな特別な、悲劇的感情をわざと高めて、味わっているのかなと思いました。

 

 

村木道彦歌集 (現代歌人文庫 24)

村木道彦歌集 (現代歌人文庫 24)